ROE改善の最善策を日本のバリュー株はできない、社会にとっても非効率
東証の低PBR改善は株主還元強化一本足打法となりまして、多くの企業が減益でも還元、普通でも還元、増益ならめちゃ還元と日本でポイント還元がもっとも熱いのは株式市場となっているw
株主還元強化は最低策として必要だと思っていて、利益が増えるか維持どちらでもいいが、配当性向が30%なら70%の残った資金は企業に残ることになる。
この残った資金は全てが現金とは言わないが、例えば経営者や従業員が無駄に消費できる資金となり、使い込まれるケースが多く、日本の経営者は米国と比較して会社資金の使い込みが多いように思う。もし米国企業で会社資金使い込みを行えば訴訟で人生がスーパー真っ暗だろう。
日本はヌルい上に、配当性向30%の企業が恒例的に多いので使い込める資金が残る。
あるいは、戦略的に残しているわけでもないので経営者が恣意的に使える資金が増え、クソみたいな事業を行ったり、流行りにだけ乗ったりしょうもない経営が増える結果となる。
重要なのはROEでありフリーキャッシュフロー
東証は日本企業のPBRの割安さを指摘したが、もっと本質的なのはフリーキャッシュフローが増えているか否か?だろう。
フリーキャッシュフローは営業CFから投資CFを引いたもので、本業で効率的に稼げているか?の指標であり、3つ目の財務CF増加要因となる重要ファクターです。
ROEも合わせて重要で、PBRはROEとPERが高いか低いかでしかない。
ROEが高い状態が持続するならPBRは勝手に上がっていくはずだ、なぜなら成長や還元ができていないならROEはどんどん低下していく。
その結果として日本企業でよくみる、PBR0.5〜8倍、ROE4〜6%という、割安というより非効率な結果であろう企業がバリュー株として放置してある。
フリーキャッシュフローやROEを増やすには?
フリーキャッシュフローを増やすには基本的には本業の利益を増やすしかなく、投資を行って事業の効率化や可能なら拡大する。これで余分に増えたキャッシュフローは還元するというのがアメリカ流だろう。
ROEは自己資本に対する利益の大きさであり、上げるためには2択で利益が増える or 自己資本が減るのどちらかである。株主還元はROE上昇においては自己資本が減るという結果で上昇要因となる。
例えば、債務を増やして自己資本が増えないように還元すれば、債務で利益を増加させる間はROEが上昇する。これで1期や2期だけROEがとてつもなく上昇する企業が稀にあるが、利益が増えても還元しなければROEはどんどん低下していくので元に戻っていく。
PBR1倍割れとは?
成長性がないけど過去に増配をひたすら続けてきて、配当性向を引き上げてきたのでPBRが3倍以上ある低成長企業がある。
その一方で、利益が出る期の方が多く、配当利回りが3%の平均以上はあるのにPBRが1倍を割る企業。
この2社を分けるのは配当性向だったり、増配などの還元だったりする。
ROEの差があると思うので、下のバリュー株の方は配当性向を引き上げていっても株価上昇で配当利回りがそこまで伸びないかもしれないが、ファンドや投資家からすれば成長なくとも配当性向を30%→60%にさせれば利回りは2倍になるので、現時点で3%程度の利回りなら倍を目指すことも難しくない。
アメリカ株で成長性がない高配当セクターでは利回りが5%超えることは珍しくなく、10%に到達する企業もある。成長ない企業は還元で報いる以外はないだろう。
なぜなら、成長しない企業が利益の大部分を企業内に残しても社会にとって無駄な資金が会社に残ることになるので社会にとっても望ましくない。
PBR1倍割れは日本社会の資金回転の悪さの結果
私は配当性向や総還元性向は最低50%、できたら80%くらいは出してほしいと思っている。特に成長性がない企業に関しては。
フリーキャッシュフローを増やすには効率的な投資が必要で、これがM&Aや事業再編、新たな成長分野への投資を促して社会が成長していく。
投資家に会社の利益を還元しろ!と言えば金の亡者のように聞こえるだろうが、それで結果として投資家が損しようが、成長性のない企業に利益を残すほうが無駄だと思っている。
投資家に還元すれば、彼らは強欲なので低成長企業の利益から出た配当を成長企業に投資したり、投資活動をしている人の方が平均的には支出が多いので社会にとってもプラスだろう。
社会は資金の回転こそが重要であり、アメリカは日本の何倍ものスピードで資金が回転する。(GDP比)
日本は低金利も問題だが、企業の還元の薄さも問題で成長できない企業は還元フェーズになって、できる範囲での企業拡大や効率化に留めて無駄な資本は社会に返し、資本家たちが強欲さでもって社会にぶち込んでいく方が失敗は多いだろうが、日本の新たな企業に回る資金が少しでも増えていく期待ができる。
その中で株主還元強化が全部のバリュー株で起きるなら、中途半端なグロース株とか、中途半端銘柄から資金が引き上げて日本市場全体のバリューの見直しも起きるでしょう。
現在の中途半端な政策では本腰を入れている比較的大きな企業は、少し時間はかかるがPERが1倍から少しずつ上って利回りが良いところで落ち着くだろう。
投資家側にも変化が必要で、企業がPBR1倍割れを改善すると決断するまではいいが、投資家がその政策や事業価値に見合った評価で投資をしなければ、PBR修正が継続しないだろうと思っている。銀行セクターは限界感があり利上げ期待がなければもっと低いだろう。
低PBRは低ROEなので配当を増やすには配当性向上昇しかなく、利益が安定増しないのでROEも増えない。この問題へのアンサーがなかなかなく現状だと投資家を迷わせている。
ここまで株主還元が強化されてきたが、マクロ環境が悪化して減益ラッシュがあれば増配中の企業の動きに不信感ができてしまう。