堀のあるROEの高い企業に投資しよう
現在は相場が不安定で、強かった銘柄まで売られる極端な売りも週に1回はある。
中東情勢が改善しないままで米国は金利とインフレを気にするいつものフェーズに入ってしまっていて、中東情勢はリスクとして認識されなくなった。
そんな相場では堀のある他の企業が入り込めない企業まで売られるので絶好の仕込みどきなので堀という物を分類しておこう。
①規制という堀
ゴミ処理場や大きな工場は作るための資本が多くいりますが、それだけではなく国や自治体の認可がいる。
ゴミ処理場や化学工場なら住宅地の近くには配置できないので、雇用確保も難しく新規参入は便利な立地では難しく、昔からここにあるんですよねで良いバランスの既存施設と比較すれば新施設は物流コストを計算する必要があり、基本的に不利となる。
日本で工場が増えそうなのはTSMCや日本政府の支援ムーブによるもので、それなしでは動かなかったのを見るに規制は大きい堀である。
銀行は規制で守られており、国は増やす方針はとっておらず大型企業による買収で名前を変えるケースや統廃合が基本で規制が強い業界
日本だと上場していないが、海外にはゴミ処理や水道の運営業者の株式も上場しているが、国が規制する一定の価格で運営しないといけないが参入はなくコスト削減次第では10%くらいのROEは維持できる。
②特許という堀
医薬品から自動車部品、IT業界など幅広いところに特許がある。
既製品で同業と競争すれば規模の経済の競争となり、大手2社まで減ったとしても利益は大したことない。特に需要が超過し続けない限りはどちらかが値下げして全体の利益が減る。
特許は無駄な競争を減らす方法で、工夫をすれば永続的に利益をもたらす魔法となる。
特に医薬品は特許だけでなく規制によっても守られており、売上の3割以上を研究開発に使う意味がある業界もある。医薬品の特許を取り、認可を取って販売するまではいくつものフェーズがあり大規模な資金が必要となる、これが発売されれば国からの価格の制限は弱いので利益はかなり出ることになる。特に米国で売れれば日本とは比較にならない利益となる。
③乗り換えコスト
個人ならNetflixでもHuluでもアマプラでも動画配信サービスを簡単に切り替えられる。家族と大バトルにならない限りはw
つまり、サブスクやビジネスサービスは利用側の規模が拡大するほど乗り換えコストが増大していく。
例えば企業の業務アプリを安いからと切り替えたら、利用していた社員が使いこなせず、今までのファイルも使えず作り直していくとしよう、徐々にそれが全体の生産性低下に繋がってはコストダウンを成し遂げるまで時間がかかるかもしれない。
なので日本ではアジャイル開発さえ普及しないし、アジャイルツールは企業の1チーム内からノウハウがじっくり積み上げられる遅さがある。
例えばサイバーセキュリティソフトで切り替え中、切り替え直後にセキュリティの問題が起きたら、取り返しがつかないコストを払ってしまうことになり、戻すのか継続するのか無駄なコストが続くことになる。
この乗り換えコストは強力で、MicrosoftやGoogleでさえも一度築かれたサービス基盤を奪い取ることができない市場は無数にある。
④ブランド、経営ノウハウ
ブランドは築かれたら、その企業が信頼を大きく裏切らない限りは圧倒的な堀である。
ブランドを築き上げるには並みの方法では難しく、企業全体で企業イメージを守り、何年経っても変わらないイメージを植え付ける必要がある。
これは広告をただかけるだけでは無理で、社員教育と圧倒的な差別化が必要となる。
経営ノウハウは上に付随したり、シナジー的なものでブランドと経営ノウハウは経営者が変わっても残っていれば偉大な企業をそのまま偉大で維持する堀となる。
同じ業界だとしても経営に特殊なノウハウがあれば、低成長や衰退業界から成長企業が出現するように経営ノウハウが他と差をつけることが大いにあり、それが経営者だけのトップシークレットならいつかは潰れるが、ユニクロのように自社の存在価値や社会に与えたい意味を世の中に出しながら、シンプルで分かりやすくパーパスを公開していれば継いだ人物がそれを守るなら簡単に企業は変わらないだろう。
経営ノウハウとブランドが組織自体に染み付いていれば、バフェットが言うような誰が経営しても良い企業となる期待ができる。
最後にネットワーク効果を上げておく、現代型の企業ならネットワーク効果による成功が多い。
FacebookやInstagramはこの2つのSNSが完全にシナジーとはなっていないが、それぞれに大きなユーザーのネットワークがあり、ユーザーの多さが堀となる。
PayPayや一気に大量の資金を投下して、ユーザーを獲得したがネットワーク効果を狙ったものだろう。
ネットワーク効果を期待して楽天経済圏のようなユーザーの堀を作ろうとする企業もあるが…
堀を強化し、侵食されない企業に長期投資
堀の高い企業としてMicrosoftがあるが、そんな企業でもモバイルで失敗し、多くの失敗を重ねた。
ネットワーク効果で堀を築いたFacebookはMetaとなりメタバースに注力するも失敗した。
MicrosoftとMetaは既存の堀を活かして違う業界の攻略に乗り出して大きな損失を出しても、堀があるから大丈夫だった。堀のない企業が新事業に進出していったら「あいつ、死んだわ」と思ったほうがいいだろうw
Microsoftは過去に失敗し、一時は株価が低迷していたが注力分野を成長性のある既存の堀の拡大に向け直したことで株価は一気に上昇していった。
Appleは色々な製品に手を出しているが、確実にiPhoneを基本としたネットワーク効果の範囲内で、自分の堀の中を強化している。
iPhone、iMac、Apple WatchにApple Payを使っているユーザーがAndroidに機種変できるだろうか?愚問だ。スーパーウルトラロックインされているユーザーだと思う他ないだろう。
MetaやMicrosoftは失敗したが、多くの企業が他の市場への参入を常に狙っている。
資本力だけで言えばメガテックの参入には勝てないが、堀が機能している限りは競り負けることはない。堀のない企業は最終的に買収か倒産かで消えていく。
また、堀はAIや新技術で潰されることがある。日本にある衰退産業も昔は利益率の高い優れたビジネスだったことにはいつだって留意したい。
これだけフィンテックにより支払い技術が進化しても、VISAやMastercardの利益率は下がらず堀を維持している。
新たな技術が出てくるたびに、これによって潰れる業界があるかを考えるのは重要だし、自分の投資先が新技術にどういった対応をしているかは見ておく必要がある。
規制された産業に投資していても規制緩和でライバルが無限に入るかもしれない、ネットワーク効果の高い市場で買収が起きて一気にまくられるかもしれない。
堀がなくなった企業で復活を遂げたのは富士フィルムやソニーなどだろう。
堀がなくなると新たな市場で成長しているか、違う堀を構築できていたが重要になる。
堀がある企業はROEが高くなり、ROICも平均よりは高いだろう。
堀があるのにROICが低下しているなら何かしらの問題が起きているだろう、新たな事業で失敗しているか、堀がなくなってきているか。
投資先に堀のある、ROEやROICが高い企業を上手く入れておきたい。