日本は利上げできない
日銀はYCCの幅を拡大した、10年金利は長期金利と呼ばれてボリューミーな債券だが、日本国債は1-10年の間がもっとも発行され、特に多かったのが中期債と言われる2-5年だった…
しかし、コロナ禍で日本政府が発行した国債は短期が中心で、借換をしながらコントロールしている状況で、税収の増加で短期債を減少したが、現在もっとも多いのは短期債となっている。
市中発行額では令和4年度は短期債が一番多く、中期債が続く、長期債は短期債の半分程度で、超長期債は気にするレベルにない。
コロナ禍での国債発行についても、短期債と2年債を使っており、令和3年度の国債発行計画ではコロナ禍で発行した大量の短期国債の借換が多いと書かれている。
コロナ前は緊縮で国債発行が減少していたが、コロナ禍を分岐に日本政府は短期債に頼った。
長期債は非常にコントロールされており、YCCの影響を受ける長期や超長期の量は発行ベースは増えていない。それでも新規発行の利子負担はあるが、絶対量が多いところは安全地帯だ。
問題は短期国債が未だに中心である点で、令和5年は今年だが依然として多い。
これを解消するのが増税による税収の増加であり、緊縮に向かわせるためのAだからB増税で税収を増やしてPBを黒字化して短期の借換を減らしていきたいのだろう。
市中発行額は減り続けているので、なんとか貿易収支を黒字化できれば資産国として耐えられるかもしれない。
日本はインフレが再上昇することがないことに賭けながら、デフレでは債務負担が重しとなるのでインフレは継続し、2%目標のインフレと国債発行額の減少と税収増という狭い道を選んでいるのだろう。
日本の中期債が、短期債がと書いているが、中期債の5年は金利が0.17%で、短期の1年債利回りはマイナスだ。
長期と超長期債の発行が利払い負担増加のメインになるから避けてきたのだろう、その点は短期債で賄った政府は優秀だった。
ただ、短期債を中心に借換ニーズがまだまだあることから、短期金利を押し上げる政策金利の利上げはできない。
アメリカは今回の利上げで利子負担が凄いことになる。
FRED |
コロナ禍までは横ばいだったが、コロナで大量増発した国債があり、FRBの利上げで急加速した。
22年度の歳出に占める利払い費が5-6%だったので、倍増に向かう現在だと国防費に迫っているということになりますが…
これがアメリカの利上げの結果であり、待ち受けるドルの流出とドル安議論の際のファクトです。
他方で日本は令和5年度の利払い費が増加する予定ですが、8兆円であり増加幅は米国と比較すれば限定的です。
日本の歳出に占める22年度の利払い費の割合が7-8%で、債務償還という先進国だと日本くらいしか項目がない要素が14%を占めています。
敗戦国である日本には、資本主義の構造上必要な債務を簡単に増やせないルールとして債務償還ルールがある。これを守るには財政均衡しかないので今の政府は財政均衡を目指している。
債務を増やしてそれを無限に借換すれば利払い負担だけで良いよねというのが先進国のルールであり、それをしない日本はルール変更の議論が出ている程度。
日本はGDPが成長しないので債務を増やすのは問題視されるが、アメリカはGDP成長しているがインフレは行き過ぎなので利上げして短期的には利払い負担が急激に上昇している。
日本は短期国債を大量に発行し、借換をし、確実に償還費を毎年のように計上している。
どちらが良いかは知らないが、債務が経済を潤わせて成長させることは資本主義においては真実であり、その破綻が経済崩壊を招いて、一時的な改善から再び問題になるまでの周期性があるのが資本主義にありがちなことだ。
現在は米国政府の歳出面で一つヤバい点として利払い費が異常に膨らみだしている点がある。
まだ利上げは終わっていないし、新規発行国債はスケジュール盛り盛りなので増加の一途だろう。私が米国債に注目する一つの理由はいずれ利払い負担に耐えれずに問題視するはずだと思っていて、これが金融緩和と利下げを引き起こすのではないかと思っているわけです。
日本は利上げをすれば後追いすることになる、短期債から中期債が中心であり、実はヘッジファンドが仕掛けている長期や超長期債はある程度の利率が付きだしているが、借換で言えば短期の方が早いので問題になるのは短期から中期債になる。
YCCの拡大の容認は、10年債がまるっと変わる前には日本はインフレ終了だろうという思惑が見えている、利上げで短期金利が上がれば短期的だが歳出の問題として利払い費が言われることになる。
増税とか防衛費増大とか言っている中で、国債の利払い費が前年比で急上昇することを日本は避けないといけない。
さて、日本に利上げができるだろうか?